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『手軽に読める!』文学作品に登場するそばの名文【10選】

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はじめまして。このブログ日刊『水と蕎麦 研究図鑑』を書いているS編集長といいます。
僕は365日365店舗でそばを食べています。そば好きとそば業界全体の応援を目的にこのブログを始めました。

そばは日本の伝統的な食べ物です。そのため多くの文学作品にそばが登場します。
このページでは「そばの楽しみ方」を広げるために、小説やエッセイに登場するそばの名文を抜粋しました。そばの美味しさの表現を、文章から味わってみましょう。

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夏目 漱石

「奥さん蕎麦を食うにも色々流儀がありますがね。
初心の者に限って、むやみにツユを着けて、そうして口の内でくちゃくちゃ遣っていますね。
あれじゃ蕎麦の味はないですよ。何でも、こう、一としゃくいに引っ掛けてね」
といいつつ箸を上げると、長い奴が勢揃(せいぞろ)いをして一尺ばかり空中に釣るし上げられる。

出典:夏目 漱石『吾輩は猫である』

夏目 漱石(なつめ そうせき)1867年〈慶応3年〉~ 1916年〈大正5年〉。
日本の教師・小説家・評論家・英文学者・俳人。代表作は『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『三四郎』『それから』『こゝろ』『明暗』など。

森 鴎外

“蓮玉庵へ寄って蕎麦を一杯食っていこうか”と岡田が提案した。
僕はすぐに同意して、一しょに蓮玉庵へ引き返した。
其頃下谷から本郷へ掛けて一番名高かった蕎麦屋である。

出典:森 鷗外『鴈』

森 鷗外(もり おうがい)1862年〈文久2年〉~ 1922年〈大正11年〉。
小説家・評論家・翻訳家・教育者・陸軍軍医・官僚。
代表作は『舞姫』『うたかたの記』『鴈』『山椒大夫』『高瀬舟』など。

志賀 直哉

蕎麦は黒く太く、それが強く縒つた縄のやうにねぢれてゐいた。
香が高く、味も實にうまかつた。

出典:志賀 直哉『豊年蟲』

志賀 直哉(しが なおや)1883年〈明治16年〉~ 1971年〈昭和46年〉。
小説家。「小説の神様」と称せられる。
代表作は『暗夜行路』『和解』『小僧の神様』『城の崎にて』など。

山本 嘉次郎

そばが、酒の友として好ましいのは、ダシ汁の付け加減で、自分で味を濃くも淡くもできるところにある。もちろん、そばの香り、そばの味も酒によく合う。
だから、酒のサカナとしては、もり、ざるが適している。

出典:山本 嘉次郎『洋食考』

山本 嘉次郎(やまもと かじろう)1902年(明治35年)~ 1974年(昭和49年)。
映画監督・俳優・脚本家・随筆家。
代表作は『エノケンのちゃっきり金太』『馬』『ハワイ・マレー沖海戦』『花の中の娘たち』など

吉田 健一

(鶉の卵を二つ汁に加えるもり蕎麦)太い機械打ちのよりも、細い手打ちの方が段違ひに旨い。
鶏ほどは味が強烈でなくて、割って落とした所が見た目にも綺麗な鶉の卵を使ふことを考へた。

出典:吉田 健一『舌鼓ところどころ』  中央公論社

吉田 健一(よしだ けんいち)1912年(明治45年)~ 1977年(昭和52年)。
文芸評論家・英文学翻訳家・小説家。父は吉田茂。
代表作は『瓦礫の中』『ヨオロッパの世紀末』『日本に就いて』『時間』『定本落日抄』など。

池波 正太郎

天麩羅蕎麦…、はこばれて来た貝柱の〔かき揚げ〕を浮かせたそばをやりはじめ、
(む…うまい)否応なしに舌へ来る味覚と同時に、またも、…

出典:池波 正太郎『蛇の目 (鬼平犯科帳)』 文藝春秋


池波 正太郎(いけなみ しょうたろう)1923年〈大正12年〉~ 1990年〈平成2年〉。
劇作家・時代、歴史小説作家。
代表作は『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』『真田太平記』など

遠藤 周作

私は時折、東京に行くごとに、上野不忍池の「藪」で、そば味噌をさかなに菊正を飲むが、あそこの菊正は樽の匂いがしみこみ、えもいわれず、うまい。

出典:遠藤 周作『ぐうたら人間学』 講談社

遠藤 周作(えんどう しゅうさく)1923年〈大正12年〉~ 1996年〈平成8年〉
小説家・エッセイスト。
代表作は『海と毒薬』『沈黙』『侍』『深い河』など

渡辺 淳一

日本でだけ蕎麦が発達したのは、日本の夏が暑く、湿気が多かったからであろう。
それと今一つ、蕎麦のような微妙な風味が分かるのは、日本人の舌しかなかったのであろう。

渡辺 淳一『これを食べなきゃ』 集英社

渡辺 淳一(わたなべ じゅんいち)1933年(昭和8年)~ 2014年(平成26年)。
医学博士・小説家。
代表作は『化身』『うたかた』『失楽園』『愛の流刑地』など

嵐山 光三郎

そばの波しぶきが、さぶーんと口のなかで音をたてる。
ツンとくるそばの香り、そばの一本一本がピカッと光って、さあ食えと身をよじってる。

出典:嵐山 光三郎『頬っぺた落とし う、うまい!』 筑摩書房

嵐山 光三郎(あらしやま こうざぶろう)1942年(昭和17年)~
編集者・作家・エッセイスト。
代表作は『素人庖丁記』『芭蕉の誘惑』『悪党芭蕉』『昭和出版残侠伝』

杉浦 日向子

ソバは、手ごね機械打ち。やや色黒の細麺の量は、食事とするにはいかにも軽い。
どこよりも辛いもり汁と、甘く薫りたつ箸さばきの良い麺は、長年つれそったヴィンテージの呼気を発散し、全身をつつむ。

出典:杉浦 日向子『ソバ屋で憩う』 新潮社

杉浦 日向子(すぎうら ひなこ)1958年〈昭和33年〉~2005年〈平成17年〉。
漫画家・江戸風俗研究家・エッセイスト。
代表作は『一日江戸人』『百物語』『合葬』『江戸へようこそ』『百日紅』『二つ枕』など。

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