はじめまして。このブログ日刊『水と蕎麦 研究図鑑』を書いているS編集長といいます。僕は365日365店舗でそばを食べています。そば好きとそば業界全体の応援を目的にこのブログを始めました。
このページでは「そばの楽しみ方」を何処よりもわかりやすく、丁寧に、初心者の方でも全く問題ないように解説します。
はじめに
蕎麦の美味しさをより深く楽しんでいただくコツについて、前項でご紹介いたしました。
そばを食べたときに、感覚(五感)をどのように言語化(理屈に)して、より美味しく感じることが出来るか。ここでは五感のうちの、“音”について解説したいと思います。
そばは音をたてる食べ物
そばを食べるときの音と言えば、「ズルズル」「ツルツル」とすする音しかありません。
古典落語「時そば」で、扇子を箸に見立て「ズズズー」と音をさせて食べたふりをするのは、誰もが見聞きしたことがあると思います。
本来、和食のマナーとしては音を立てる食べ方は、下品と言われています。
何故そばだけが許されているのかと問われれば、まずは江戸時代からの伝統と答えることができるでしょう。
そばとは時間をかけずに食べるもの、気の早い江戸っ子は、さっと食べてそば屋を出るのが粋だったのです。
そばをすする意味
人が感じる香りには2種類あります。鼻先で感じる香りは「鼻先香(匂い・スメル)」、食べ物を口の中に入れたあとに感じる香りは「口中香(風味・フレーバー)」といいます。
私たちの吐く息によって、口腔内から鼻腔の嗅上皮へと送られ、食べ物の香りを感じています。
舌の味覚と口中香を合わせて、人の脳は総合的に味を感じています。
ワインのソムリエがテイスティングをするとき口の中に入れたワインを、空気を吸い込みながら転がして、香りを広げているのと同じです。
そばの香りも「口中香」で感じるものです。そのために空気と一緒に食べる“すする“という食べ方がそばには合っているのです。
※香り編と重複してます。
ヌーハラには注意
ただし最近では、ヌードルハラスメント(ヌーハラ)といって、外国人に不快感を与えるとして慎むべきであると主張する向きもあります。外国人に限らず、麺をすする音が苦手な日本人もいらっしゃいます。
私も毎日蕎麦屋に行きますが、落語のようなベタな「ズズルー」と音を立てる人は少なくなった気がします。その場の雰囲気に合わせて、そばをすする音も微(美)調整することをお勧めします。
まとめ
そばを食べるときのすする音は、より美味しく食べるために必要だと解説しました。
最後に、評論の神様、小林秀雄(1902~1983)の言葉をご紹介します。
「でも小林先生、食べ物は自分が美味しいと思うやり方で食べるのが一番だと思いますよ。」
「へえ、生意気いうね。洒落たこというね。蕎麦の喰い方っていうのは、ちゃんと科学性があるんだ。あれは喰いつかないで、スーッと吸うようにできている。ちゃーんと合理性がある。常識!こんなこたぁ常識ヨ。」
※『風のかたみ 鎌倉文士の世界』(伊藤玄二郎 著)より