「そば打ち甲子園」2025 観戦記

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2025年8月6日(水)、東京都港区浜松町の「東京都立産業貿易センター浜松町館」にて、
第15回 全国高校生そば打ち選手権大会』が開催されました!

会場は入退場自由で観戦できます
今年も現地に行って熱い闘いを観てきました!

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大会の概要

本大会は、そば文化の継承と職人育成を目的に毎年開催されていて、日本全国の農業高校・調理科高校を中心に、多くの高校生がそば打ち技術を競い合います。

高校生によるそば打ち大会としては、全国最大級の規模を誇る注目のイベントです。

今年は、全国から19校27チームがエントリー。

3人1組で構成されたチームが、制限時間内に二八蕎麦1kgの「そば打ち」の総合力を競いました。

<参加出場校>
【北海道】北海道幌加内高等学校
【宮城県】宮城県岩出山高等学校
     仙台大学附属明成高等学校
【茨城県】茨城県立太田西山高等学校
【栃木県】宇都宮短期大学附属高等学校
     栃木県立栃木農業高等学校
【群馬県】群馬県立安中総合学園高等学校
【埼玉県】埼玉県立杉戸農業高等学校
     埼玉県立秩父農工科学高等学校
【福井県】啓新高等学校
     福井県立坂井高等学校
     福井県立丸岡高等学校
【長野県】長野県下高井農林高等学校
     長野県長野吉田高等学校戸隠分校
     学校法人外語学園 松本第一高等学校
【岐阜県】中津川市立阿木高等学校
【島根県】島根県立出雲農林高等学校
【広島県】広島県立西条農業高等学校
【大分県】大分県立高田高等学校

参加校の多くが、地元にそば産地を抱える地域から出場。

過去の大会でも、北海道、群馬、福井など、そばの本場として知られる地域の学校が優勝を重ねており、地域に根ざした技術とそば文化の厚みが感じられます。

注目は福井県の啓新高等学校、
第13回・14回大会を連覇し、2連覇中の実力校です。

競技の様子はYouTubeで生配信されて、今だとアーカイブを観ることができます。

主催:一般社団法人日本麺類業団体連合会 
   全国麺類生活衛生同業組合連合会
後援:文部科学省・農林水産省・東京都
   一般社団法人全国農業協同組合中央会
   一般社団法人日本蕎麦協会
協力:一般社団法人全麺協(全国麺類文化地域連携協議会)

大会ルール

この大会のそば打ち競技は、単なる「完成品の出来映え」を競うのではなく、そば打ちの工程そのものに重きを置いた、非常に実践的で本格的な審査が行われます。

● 材料規定

  • 使用するそば粉は合計1kg
    • 国産そば粉:800g
    • 割粉(小麦粉):200g
  • 割合は「二八そば」と呼ばれる基本配合で統一されています。

● 競技工程と役割分担

  • 競技は以下の 3工程 に分けられます:
    1. 木鉢(みずまわし・練り)
    2. 延し(のし)
    3. 切り
  • 各作業を チームの3名がそれぞれ1工程ずつ担当
  • 作業順は、競技直前に審査員によるくじ引きで決定されます。
  • 事前に練習はしていても、「誰がどの作業を担当するか」は本番直前に発表
  • 突発的な対応力やチームワークが求められます。

● 衛生チェックと所作重視

  • 作業開始前に『衛生審査』が行われ、審査員が指先や爪などを確認。
  • 使用する器具や作業台の扱い、衛生管理も重要な審査ポイントとなります。
  • また、そば打ちにおける 所作の美しさ・丁寧さ・礼儀 が高く評価されます。

● 審査方式

  • 審査員5名による100点満点からの減点方式
    • 審査員構成:そば店主3名、全麺協の有段者2名
  • 評価項目:
    • 各工程の動作の正確さ
    • 材料の扱い方
    • チームの連携・手順のスムーズさ
    • 完成したそばの太さ・長さ・均一性
    • 作業後の『後始末審査
    • 最後に、全体を通した『総合評価

● 完成後の流れ

  • そば打ちが完了したら、チーム全員で 片付け作業を行う
  • 制限時間が終了し最終審査が済んだら、参加者全員で向かい合って礼をして終了

最後まで丁寧な姿勢が求められることも、この大会の大きな特長です

競技の様子

僕の目の前で競技をしていたのは、福井県の啓新高等学校Bチームでした。
静かに、そして迷いのない動きでそば打ちを進めていく3人の姿は、まるで呼吸がぴったり合った職人チームのようでした。

木鉢での水回しでは、水の加え方、手の運び方に無駄がなく、粉が一体となっていく過程をじっくりと丁寧に進めていました。

延しの作業では、生地の厚さや丸さの均一さに気を配りながら、落ち着いた手つきで作業をこなしていきます。

そして、切りの工程では、包丁のリズム、刃の入れ方、そして姿勢までもが整っていて、3人の練習量と真剣さがにじみ出ていました。

その技術と姿勢は本当に素晴らしく、観ているこちらの胸を打つものがありました。
啓新高校のレベルの高さを、あらためて実感した次第です。

表彰式

すべての競技が終了し、いよいよ採点の集計結果が発表されます。
会場は静まり返り、緊張感が一気に高まる瞬間。

まずは敢闘賞の10位から順番に読み上げられ、出場チームの名前が呼ばれるたびに拍手が起こります。

そしてついに、優勝チームの発表。

「優勝は――福井県・啓新高等学校 Aチーム!」

大きな拍手と歓声が響き渡ります。

啓新高校はこれで見事3連覇。
全国のそば打ち高校生の頂点に、今年もその名を刻みました。

優勝  啓新高等学校 Aチーム
準優勝 長野県長野吉田高等学校戸隠分校 Aチーム
3位  長野県下高井農林高等学校 Aチーム

4位  啓新高等学校 Bチーム
5位  学校法人外語学園 松本第一高等学校 Aチーム
6位  茨城県立太田西山高等学校 Bチーム
7位  仙台大学附属明成高等学校
8位  大分県立高田高等学校 Aチーム
9位  長野県長野吉田高等学校戸隠分校 Bチーム
10位  長野県下高井農林高等学校 Bチーム

採点は、審査員5名(上の写真で名札をつけている方々)による各100点満点からの減点方式で行われます。

表彰式では点数の発表はありませんでしたが、どの順位も「数点の僅差」だったとのこと。

「年々、全体のレベルが上がっている」との講評があり、全国から集まった高校生たちの技術と真剣な姿勢に、感動の拍手が送られました。

大会の必勝法!強豪校に学ぶ、上位入賞へのヒント

過去の出場校や強豪校の取り組みをヒントに、今後新たに参加を検討する学校や、これからレベルアップを目指す高校に向けて「必勝のポイント」をご紹介します。

① 全麺協の教本を基準にする

この大会は 作業の美しさや正確さ(所作)を重視する減点方式 です。したがって、評価の基準となるのは「全麺協」が示す標準的なそば打ちの技術・所作です。

  • 正しい手順と動作を習得するためには、まず全麺協の教本映像資料を参考にすることが大切です。
  • 毎年上位入賞している強豪校の多くも、この基本に忠実な所作を徹底しています。
  • 過去に指導者が変わったことで順位を落とした学校がありますが、誰が指導しても、技術の基本を磨くことで、確実な評価を出すことができます。
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基本がしっかりできていれば、例外的なスタイルでも上位入賞は可能です。たとえば、長野県の戸隠分校は他とは異なる「一本棒・丸延し」という郷土の技法で挑んでいますが、例年3位以内に入っていて、今回も準優勝に表彰されました。

基本の技術をしっかり学び、美しい所作が身についていれば、
おのずと結果があらわれると言えるでしょう。

② 「水回し」が勝敗を分ける

競技は1kgのそばを 3人1組・40分以内で交代しながら仕上げる 団体戦形式です。
この中で最も重要とされるのが、最初に担当する「水回し」の工程です。

  • 水回しが上手くいかないと、まとまりにくい「そば玉」になり、2人目の「延し」、3人目の「切り」の作業に負荷がかかります。
  • 時間配分も崩れ、後半の作業時間が不足する原因にもなります。
  • そば打ちのことわざに「包丁三日、延し三月、木鉢三年」とあるように、水回し(木鉢)は最も熟練を要する工程です。

<”技あり” 裏ばなし>
今年度優勝した 福井県・啓新高校Aチーム 、実は「水回し」後のそば玉が、かなり固めに仕上がっていました。
僕はこの時点で、もうかなり(上位入賞は)難しいのではと思ったのですが…

なんと2人目の「延し」担当がこの難しいそば玉を見事に処理し、大きく美しく延ばし切り、結果に繋がりました。

YouTubeでもその様子が見て取れますが、ほれぼれする延しで、現役蕎麦屋を営む審査員も思わずうなる “技あり” の一本でした!



(YouTubeアーカイブ動画:2時間28分25秒~29分20秒、2時間35分25秒~50秒あたりです)

③ 使用するそば粉を事前に確認・練習する

大会で使用されるそば粉は、協賛している製粉会社から提供されます。
大会事務局に問い合わせれば、実際に大会で使う予定のそば粉を事前に購入することが可能です。

  • 大会直前の練習では、本番と同じそば粉を使うことが重要です。
  • 同じ加水率でも、粉の性質が違えば仕上がりに影響します。
  • 強豪校では、使用粉の特性を理解したうえで調整練習を重ねています。

総括 〜大会を通じて、そば打ちの技術と心を学ぶ〜

全国高校生そば打ち選手権大会は、単なる技術の競い合いではなく、そば打ちを通じた礼儀集中力協調性の育成という教育的な価値に満ちた大会です。

大会の成績は僅差で決まることが多く、ほんの数点の差が優勝と準優勝を分けます。
だからこそ、基本所作の習得、使用粉への理解、チームワークといった“当たり前の積み重ね”が何より重要です。

また、大会を目指す過程そのものが、生徒たちの大きな成長につながります。
どの学校にもチャンスがあり、地域に根ざしたそば文化の継承・発展にも寄与する貴重な機会です。

これから参加を検討される高校の皆様には、ぜひ「教本に基づいた基本動作の徹底」と「事前準備の丁寧さ」を意識していただき、全国の舞台で素晴らしいそば打ちを披露していただければと思います。

そば打ちの技術と精神を、次代へ。
高校生たちの挑戦が、そばの未来を切り拓いていきます。

全力を出し切った選手のみなさんと関係者の皆様、おめでとうございます!

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